人生の暇つぶし

2016年にリタイアしました。アーリーリタイアや資産運用、旅、読書などのネタを徒然なるままに書き綴ります。

リスクについて

安心、安全という言葉が連呼されるようになったのはいつからでしょうか。
ここ20年ぐらいではないでしょうか。

当たり前のことですが、人間社会はそれほど安心でも安全でもありません。
それでもこの数十年で技術の進歩などで依然と比べればはるかに安心、安全な社会は達成できています。
しかし安全な社会になった分だけ、よりリスクに過敏になっているのか絶対的な安心と安全を求める人は少なくなく、また目の前にある事象の安心と安全だけにこだわる人も多いです。

リスクというのは何か悪いことが起こる発生する可能性です。
リスクに対応する方法はコストをかけてヘッジするか、リスクが現実化した時のコストを引き受けるかしかありません。
大抵の場合はこれらの組み合わせでコストに見合うヘッジをしつつ、ヘッジしきれない部分を引き受けるという判断をしているでしょう。

リスクには100%も0%もありません。
人間が150歳までに死ぬ確率は100%ですが、それはリスクではありませんし、明日宇宙人が攻めてくる確率も0%なのでこれもリスクではありません。
正確にいうと両方とも0.00001%ぐらいの確率で反対の事象が実現するかもしれませんが。

けれどもあたかもリスクをほとんど100%や0%のように考えてしまう人がかなりいます。
放射能やコロナがとにかく怖いという人がいるでしょうし、自分は大丈夫と信じて危険行為を簡単に行ってしまう人もいます。
このような考え方が危険なのはそこにあるコストを無視してしまうからです。
コロナが怖いからと言って無限大のコストをかけてしまうとコロナによる人的、経済的損害をはるかにコストが上回ってしまうでしょう。
あるいは俺は大丈夫と言って危険行為をすると本来低コストでヘッジをかけれられたにも関わらず、大きな損害を高い確率で被ることになります。

リスクの対処の仕方は可視化する以外ありません。
その確率、ヘッジコスト、現実化した場合のコストを常に正確に計算し検証することです。
コロナのような社会全体に関わり、まだよく分かっていない感染症であれば評価が難しいのでトライアンドエラーを繰り返すしかありませんが、個人ならある程度までは正確に評価できるのではないでしょうか。
投資をしている人はそのような能力が高いのではないかと思います。

最近の沢木耕太郎へのインタビューで不幸を避ける努力はするけれどそれでもあってしまったら不幸に縁にあったということであり、それはそれで引き受けるものとありました。
バックパッカーをしていた人は大抵そういう感覚で旅に出たのではないでしょうか。
発展途上国をバックパッカーすると危険にあう確率は結構あります。
私が学生の頃は毎年行方不明者が出ていましたし、マラリヤなどの病気で死ぬ人もいました。
エベレストに行った時に私は高山病に慎重になっていましたが、同じ地域のロッジでフランス人女性が高山病で亡くなっていたことがありました。
私自身は集団スリの餌食にあったり、何度か殴られたりしたぐらいでそれほどの危険にはあっていませんが、それは私がビビりで海外ではかなり慎重に行動してリスクを抑える努力をしていたからだと思います。

アーリーリタイアには当然リスクがあります。
お金が尽きたり、病気になったり、孤独になったり、暇を持て余したりすることもあるでしょう。
けれどそれらを恐れてアーリーリタイアをしないことによるコストは100%実現してしまいます。
人間の寿命が限られている以上は時間は確実に過ぎ去っていきますし、働くことの苦労もしなければなりません。
リスクはまだ発生していないからこそのリスクであり、発生していないことは漠然とコストを過大に考えてしまいます。
しかし、リスクを数値化したりして具体的なイメージを描いてみると案外大したリスクでもないことが分かります。
お金が尽きたらまた働けばいいだけの話ですし、いったんリタイアできているのですから危険水域に入る前に節約するなどのことが可能でしょうし、働くといっても必要な金額はそれほど多くはないはずです。
孤独を感じれば猫や犬を飼ってみたり、趣味などのサークル活動的なことに参加したり、ゲストハウスでも泊まってみればよいのです。
リスクを具体的にイメージしてみてもまだリスクを気にするのなら、それはアーリーリタイアするコストのほうが高いということなので、よりコストの低い働き続けるという選択肢を取るのが正解です。

アーリーリタイアしようが、バックパッカーをしようが、転職しようが、結婚しようが、明日遊びに行こうが、家で寝てようが、何をしてもリスクはつきまといます。
リスクを避ける最低限の努力は必要でも、過度なヘッジにはとてつもないコストが掛かっており、ヘッジが別のリスクを生み出していることも多々あります。
どれだけリスクをヘッジしたところで気力や体力が落ちていき、最後には確実に死ぬということは変わりません。
負担にならない程度のリスクヘッジをしておけばいちいちリスクを並べ立てても仕方がないし、時間と労力の無駄です。
安全、安心な社会を求める声はますます強まっているように見えますし、社会が豊かになっているからこそリスクを回避し委縮する風潮があるのかもしれませんが、リスクばかりを考えて過剰に費やしてしまうコストのことやリスクを取ることで得られるもののことも忘れたくないものです。

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[ 2020/08/25 15:13 ] 雑感 | TB(-) | CM(6)

2020年7月のお奨め本

2020年7月に読んだ本の中でお奨めのものを紹介します。

・オスマン帝国の崩壊:中東における第一次世界大戦(ユージン・ローガン )

第一次世界大戦前のオスマン帝国は西欧列強に翻弄されその領土を切り取られつつありました。
西欧列強に対抗すべく青年トルコ人による革命が起き、ドイツと同盟を組み第一次世界大戦への参戦とその敗北によるオスマン帝国の崩壊の過程を詳細にたどります。

オスマントルコ、中東における第一次世界大戦の解説です。
第一次世界大戦に関する本は多くがヨーロッパ中心となりますが、本書は全編にわたって中東が舞台です。
英仏の敗北に終わったガリポリの戦いを始め、エジプト、パレスチナ、メソポタミア、アラビア半島、コーカサスと各地で繰り広げられた戦いの経過やその影響が詳細に書かれています。
一般的なイメージとは異なりオスマントルコは各地で善戦していたし、特にガリポリの戦いで英仏を撃退したことは大きな意味を持ちました。
また、アルメニア人に対する虐殺についても詳細にその過程を追っています。

オスマントルコの戦いはイスラムによるジハードという側面もあり、ジハードを呼び掛けるオスマントルコのスルタンと植民地下のムスリムの動揺を抑えようとする英国という面から見ても非常に興味深いです。
インドでムスリムの反乱がおきると英国に大きなダメージを与えたでしょうし、だからこそ戦局がよくないときにアラブ人による蜂起を促し、問題となったフサインマクマホン書簡が交わされます。

中東で様々な国家、人種で繰り広げられた激戦を考えると、やはり第一次世界大戦が世界大戦とされたのはオスマントルコの参戦があったからこそだと思います。
そしてかつて栄華を誇った600年にわたる帝国が崩壊していくさまはまさに歴史のドラマですし、現代人がロマンさを感じる最後の物語のように感じます。

中東での第一次世界大戦はどのようなものだったのか、オスマントルコはどのように最期を迎えたのかに興味がある人には必須の本だと思います。
各地での戦いを詳細に解説しており大部な本ですがお薦めです。




・語りえぬものを語る(野矢 茂樹 )

我々はどのような世界を生きているのでしょうか。
著者は相対主義、因果、相貌論、懐疑論、私的言語、知覚と概念などのパラドックスに陥りがちでまさに語りえずそこにあることを指し示すことしかできないような問題を著者のたどり着いた哲学的地平を語ってくれます。

本のPR誌で連載されたエッセイにその補論、注釈を加えたものです。
エッセイの形を取っているので語り口は平易ですし、読みやすいのですがその内容は刺激が満載のまさに哲学者がどのように考えてきたかを読者に語ってくれています。
可能世界である論理空間、そして実際の生活に近い行為空間、あるいは相対主義の在り方、未来をどう考えるかなど、そんな風に考えるのかと驚きが満載でした。

哲学というものが私たちの生活の近くにあるもので、実生活に根差した思考の冒険であることを改めて気づかされてくれる一冊です。
内容は深いのですが、それほどつっかえることなく読めると思うので、哲学に興味がない人にでも手を取ってほしいお薦め本です。



・その女アレックス (ピエール ルメートル)

帰宅途中にアレックスという女が誘拐され、監禁されます。
誘拐が目撃されて警部のカミーユのチームはすぐに捜索に入りますが、アレックスには驚愕の秘密が隠されていました。

誘拐ものかと思って読んでいると、話が違う方向へと進んでいきどんどん引き込まれました。
3部構成になっていますが、構成が秀逸で読者の目線を変えていく感じが面白いです。
ネタバレになるのであまり書けないですが、アレックスとカミーユという2人の主人公のキャラの際立たせかたとその秀逸なストーリー展開をぜひ味わってほしいです。
悲しい話なのですが、最後に救われるようなエピソードが一つ添えられているのが良かったです。



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[ 2020/08/11 15:40 ] 今月のお奨め本 | TB(-) | CM(0)
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