人生の暇つぶし

2016年にリタイアしました。アーリーリタイアや資産運用、旅、読書などのネタを徒然なるままに書き綴ります。

2016年11月のお奨め本

2016年11月に読んだ本の中でお奨めのものを紹介します。

・責任と判断 (ハンナ・アレント)

ハンナ・アレントの遺稿集で道徳的な責任と判断に関わるものを集めたものです。
ナチスの行為に対して個人の責任はどのように問われのでしょうか。
国家的な犯罪は組織が行ったものであり個人はその命令に従ったものでしかないのでしょうか。
その場合は罪を軽減されるのでしょうか。
積極的に残虐行為には加担せずとも消極的には多くのドイツ国民が加担した罪はどうなのでしょう。
あるいはローマ教皇がナチスへの行為に見て見ぬふりをしたことに罪はあるのでしょうか。
それらを著者は裁判を紹介しながら問うていきます。
そして当たり前ですが法廷で裁かれるのは被告個人であり組織ではありません。

一方で何らかの行為をするときに人はどのようにして道徳的に判断するのでしょうか。
著者はドイツの人たちがいとも簡単にナチスの道徳を受け入れ、戦後は再びナチスの道徳を簡単に捨て去ったことに注目します。
宗教であれば道徳的な判断は命令ですが、そうでない場合は個々人は道徳は何によって立つべきなのでしょうか。
ソクラテス、カント、ニーチェなどに言及しながら道徳的な判断を下すときの良心について考えながら考えていきます。

講演や講義が主でアレントの本としては読みやすいと思います。
アレントの主著を読む場合には最初に入門として読むのが良いでしょう。




・ルイ・ボナパルトのブリュメール18日―初版 (カール・マルクス)

48年革命で7月王政が倒れナポレオン三世が皇帝になるまでの経緯を同時代にマルクスが論述したものです。
革命後にもその権力争いは激しいもので目まぐるしく主導権を握る党派が入れ替わります。
そして最後にはナポレオン三世がクーデタにより皇帝になるまでを細かく追っていきます。
当時の状況が分かりにくいと思いますが、人名や党派、年表および訳注がしっかりしているので確認しながら読むと問題ないと思います。
ジャーナリスティックに当時のフランスを描写するだけでなく、代議制の欠陥を鋭く突いているのが本書が評価を得てきた理由なのだと思います。
歴史は一度目は悲劇として二度目は喜劇として現れるという冒頭で有名な文章がありますが、叔父のナポレオン一世の歴史と対比しており、歴史の繰り返される構図に注意を促しています。
代議制の陥穽ともいえる代表するものと代表されるものの繋がりが無くなった時の社会の不安定さや進む方向性はその後の歴史が何度も表しています。

今回トランプさんが大統領となり改めて代議制の脆さを感じて再読してみましたが、やはり歴史に残る著作は人や社会の原理的なものをとらえているのだと感じました。
柄谷行人の解説は非常に充実しておりこちらも素晴らしいです。




・ナイトホークス (マイクル・コナリー)

ベトナムで地下トンネルの探査と破壊の兵士だったボッシュは帰還後に殺人課の刑事をしていました。
ある時かつての戦友の死体を発見しますが、やがてそれは銀行強盗事件と絡んでいることをつかみます。
ボッシュはFBIの女性捜査官と組み銀行強盗事件を追っていきます。

ありがちな刑事ものハードボイルドで、ベトナム帰りで夜は悪夢にうなされ、昼間は妥協を知らない一匹狼の刑事という設定と適度に重苦しい雰囲気を醸し出します。
私のようなハードボイルド好きはこれだけでOKです。
しかしそれだけではなく捜査の過程もしっかし描写しており手がかりを伝いながら犯人に迫っていくのはしっかりかけています。
ハードボイルド好きであればマイケル・コナリーの処女作として読んでおくべきでしょう。

ところでタイトルのナイトホークスとはホッパーという画家の代表作です。
絵にはあまり興味がないのですが、私はこの作品が結構好きです。
この作品の雰囲気をうまく伝えていると思います。



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[ 2016/12/04 18:16 ] 今月のお奨め本 | TB(-) | CM(2)

2016年10月のお奨め本

2016年10月に読んだ本の中でお奨めのものを紹介します。

・金融論 -- 市場と経済政策の有効性(福田 慎一)

資産の価格と選択、金融市場、インフレとデフレなど金融論の基礎を網羅しています。
マクロ、ミクロの初歩的な知識があったほうがいいと思いますが、なくても理解できるレベルです。
モデルを使った説明もところどころあり数式も出てきますが、それほど難しくないです。
一般常識としての金融論としてはこの本で解説されていることを知っていれば十分ではないでしょうか。
とても良い入門書です。




・中世イタリア商人の世界―ルネサンス前夜の年代記 (清水 広一郎)

14世紀のフィレンツェの社会を商人であり年代記作者でもあったジョヴァンニ・ヴィッラーニの生涯を通して描いています。
14世紀はフィレンツェが都市国家として力をつけてきた時期で、フィレンツェ商人も国際的に活躍していた頃です。
しかしペストを経験したり商社の破産、フィレンツェの都市国家間の競争での危機もあった時代です。
ヴィッラーニの会社も破産しています。
そのような興隆と没落を商人の年代記を通して感じられる生き生きとした世界は現代の私たちでもとても身近に感じられます。
興味深かったのは当時のイタリアの記録に対する考え方です。
商人は細かく記録をする習慣があり、貸借契約、夫婦間の財産契約などは公証人が必ず記録していたそうです。
都市法もドイツなどと比較すると数十倍にもなりルールと証拠を明確化する習慣があったようです。
現在でもイタリアの公証人の地位が高いのは公証人による記録が制度化されたこの頃からの伝統だそうです。

イタリア商人の世界と14世紀のフィレンツェの歴史、ヴィッラーニの生涯とテーマが錯綜しているので一貫性がないかなと思いますが、とても面白い本です。




・天使と悪魔 (ダン・ブラウン)

ハーヴァード大の図像学者ラングドンはスイスのCERNの所長から呼び出しを受けます。
CERNで研究者が殺害され胸には秘密結社の焼き印が押されていました。
その研究者は反物質を作り出すことに成功しており、凄まじい爆発を引き起こす反物質のサンプルが盗まれていました。
研究者の娘、ヴィットリアとラングドンは反物質を探しバチカンに飛ぶことになります。
そこでは秘密結社の恐ろしい計画が待ち受けていました。

最先端の科学を悪者に利用しようとし、主人公が芸術作品や古文書に秘められた謎を解いて、危機を乗り越えて、最後に秘密結社の真実が明かされるという典型的なパターンです。
本書もバチカンの図書館の古文書や芸術作品に秘められた謎を図像学者のラングドンが解いて敵に迫っていきます。
大学教授なのでアクション的なところは弱いですが、危機の連続を乗り切るシーンも何度もあります。
エンターテイメントを意識しているせいか科学も芸術から解かれる謎も分かりやすくしてありそこが少し残念です。
しかしバチカンのコンクラーベの仕組みや図書館の描写などが細かくてもとても興味深いものでした。

私はこのタイプの小説が好きなのですが、アメリカでは結構あるのに日本では見かけないように思います。
西欧ではキリスト教やユダヤ教があり、あるいはヒトラーがいたのでテーマにしやすいのでしょうか。

シリーズの次作「ダ・ヴィンチコード」と同様に本書もバチカンにとってはとんでもないストーリーなのですが、バチカンの協力も得ているようです。
意外とバチカンはこういうことに寛容かもしれません。



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[ 2016/11/06 12:18 ] 今月のお奨め本 | TB(-) | CM(2)
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