人生の暇つぶし

2016年にリタイアしました。アーリーリタイアや資産運用、旅、読書などのネタを徒然なるままに書き綴ります。

2016年12月のお奨め本

2016年12月に読んだ本の中でお奨めのものを紹介します。

・ヒトラー(イアン・カーショー)

現在のところヒトラーの伝記では決定版ともいえる本です。
ヒトラーの権力とは何だったのか、どのようにしてヒトラーが絶対的な権力を持つに至ったかを解明しようとしています。

圧巻の内容とボリュームです。
ヒトラーの思想が育まれた背景、ナチスがいかにして権力を握ったか、ヒトラーが絶対的な権力を維持できたのはなぜか。
幼少期から最後に自殺するまでを最新の資料を掘り起こして詳細に描いています。

ナチスは権力を握るまでは単なる泡沫政党でその過激な思想もそれ程支持を受けていたわけではありません。
しかし大恐慌などの社会経済的情勢や保守派の政治家、軍部、そしてドイツ国民が様々な思惑から好戦的な人種主義者にその運命を託することになります。
ヒトラーはドイツ国民を途方もない賭けに巻き込み、国内外で悲惨な状態を引き起こしていきます。
敗北が決定的になったときには降伏ではなくドイツ国民とともに滅びることを望み、いたずらに破壊と殺戮の期間を延ばすことになります。
そして最後までヒトラーはユダヤ人とボルシェビキを絶滅させることが与えられた使命と考えていました。

それにしてもなんて人間は愚かで残虐なんだと考えさせられてしまいます。
そしてその本質はほとんど変わっていなのだろうと思います。
ヒトラーの後にもソ連や中国、カンボジア、旧ユーゴなど中東など同じようなことが何度も起きたのは必然なのでしょうか。

ナチス、ヒトラーに興味がある人には必読の本でしょう。
ただしもの凄いページ数なので気合が必要です。
このような素晴らしい本を書いた著者と翻訳した訳者に感謝したくなります。
ちなみに翻訳は7年かかっているそうです。
いったい7年かかった翻訳のギャラはいくらぐらいなのでしょうか。




・英米哲学史講義 (一ノ瀬 正樹)

英米に絞って経験論から分析哲学までの流れを解説しています。
主なトピックとして経験論、功利主義、論理実証主義、プラグマティズム、論理学、確率に関する哲学など。

経験論以降英米哲学がどのような道を歩んだのかを解説してくれている本はあまりないのではないでしょうか。
前半は分かりやすい内容ですが、最後の数章は内容が難しくなります。
論理学や確率が絡み推論や意思決定の話になると初学者には厳しいものがあります。
以前記事で触れたベイズの定理の哲学的な問題についても解説があります。
最後の数章はもう少し丁寧な解説が欲しかったですが、経験論から分析哲学までの流れをつかむにはとても良い本です。

日本では大陸系の哲学に関する本が多いですが、英米系の哲学に関する本ももっと増えてほしいものです。




・弁護士の血 (スティーヴ・キャヴァナー)

元は詐欺師でもあったニューヨークの弁護士エディーはロシアンマフィアのボスに爆弾の入ったベストで裁判所に入れと脅されます。
重要な証人を殺害して無罪になるためです。
娘も誘拐され絶体絶命になったエディーは娘を助けるために自分のあらゆる能力を使ってマフィアに対抗します。

いつ娘が殺されるかもしれない、自分も爆弾で殺されるかもしれないという緊迫した展開がスリリングで楽しいです。
法廷での駆け引きも面白いし、アクションシーンもいいアクセントになっています。
特にエディーが反撃に出るところは爽快です。

設定としてはありきたりなのですが、読者を楽しませてくれる一級のエンターテイメントです。





にほんブログ村 ライフスタイルブログ セミリタイア生活へ
にほんブログ村

[ 2017/01/15 12:10 ] 今月のお奨め本 | TB(0) | CM(4)

2016年11月のお奨め本

2016年11月に読んだ本の中でお奨めのものを紹介します。

・責任と判断 (ハンナ・アレント)

ハンナ・アレントの遺稿集で道徳的な責任と判断に関わるものを集めたものです。
ナチスの行為に対して個人の責任はどのように問われのでしょうか。
国家的な犯罪は組織が行ったものであり個人はその命令に従ったものでしかないのでしょうか。
その場合は罪を軽減されるのでしょうか。
積極的に残虐行為には加担せずとも消極的には多くのドイツ国民が加担した罪はどうなのでしょう。
あるいはローマ教皇がナチスへの行為に見て見ぬふりをしたことに罪はあるのでしょうか。
それらを著者は裁判を紹介しながら問うていきます。
そして当たり前ですが法廷で裁かれるのは被告個人であり組織ではありません。

一方で何らかの行為をするときに人はどのようにして道徳的に判断するのでしょうか。
著者はドイツの人たちがいとも簡単にナチスの道徳を受け入れ、戦後は再びナチスの道徳を簡単に捨て去ったことに注目します。
宗教であれば道徳的な判断は命令ですが、そうでない場合は個々人は道徳は何によって立つべきなのでしょうか。
ソクラテス、カント、ニーチェなどに言及しながら道徳的な判断を下すときの良心について考えながら考えていきます。

講演や講義が主でアレントの本としては読みやすいと思います。
アレントの主著を読む場合には最初に入門として読むのが良いでしょう。




・ルイ・ボナパルトのブリュメール18日―初版 (カール・マルクス)

48年革命で7月王政が倒れナポレオン三世が皇帝になるまでの経緯を同時代にマルクスが論述したものです。
革命後にもその権力争いは激しいもので目まぐるしく主導権を握る党派が入れ替わります。
そして最後にはナポレオン三世がクーデタにより皇帝になるまでを細かく追っていきます。
当時の状況が分かりにくいと思いますが、人名や党派、年表および訳注がしっかりしているので確認しながら読むと問題ないと思います。
ジャーナリスティックに当時のフランスを描写するだけでなく、代議制の欠陥を鋭く突いているのが本書が評価を得てきた理由なのだと思います。
歴史は一度目は悲劇として二度目は喜劇として現れるという冒頭で有名な文章がありますが、叔父のナポレオン一世の歴史と対比しており、歴史の繰り返される構図に注意を促しています。
代議制の陥穽ともいえる代表するものと代表されるものの繋がりが無くなった時の社会の不安定さや進む方向性はその後の歴史が何度も表しています。

今回トランプさんが大統領となり改めて代議制の脆さを感じて再読してみましたが、やはり歴史に残る著作は人や社会の原理的なものをとらえているのだと感じました。
柄谷行人の解説は非常に充実しておりこちらも素晴らしいです。




・ナイトホークス (マイクル・コナリー)

ベトナムで地下トンネルの探査と破壊の兵士だったボッシュは帰還後に殺人課の刑事をしていました。
ある時かつての戦友の死体を発見しますが、やがてそれは銀行強盗事件と絡んでいることをつかみます。
ボッシュはFBIの女性捜査官と組み銀行強盗事件を追っていきます。

ありがちな刑事ものハードボイルドで、ベトナム帰りで夜は悪夢にうなされ、昼間は妥協を知らない一匹狼の刑事という設定と適度に重苦しい雰囲気を醸し出します。
私のようなハードボイルド好きはこれだけでOKです。
しかしそれだけではなく捜査の過程もしっかし描写しており手がかりを伝いながら犯人に迫っていくのはしっかりかけています。
ハードボイルド好きであればマイケル・コナリーの処女作として読んでおくべきでしょう。

ところでタイトルのナイトホークスとはホッパーという画家の代表作です。
絵にはあまり興味がないのですが、私はこの作品が結構好きです。
この作品の雰囲気をうまく伝えていると思います。



にほんブログ村 ライフスタイルブログ セミリタイア生活へ
にほんブログ村

[ 2016/12/04 18:16 ] 今月のお奨め本 | TB(-) | CM(2)
ブログ村
にほんブログ村 ライフスタイルブログ セミリタイア生活へ
検索フォーム
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

相互リンクとコメントを頂いた方