・アメリカ独立革命(ゴードン・S.ウッド )アメリカが独立する前の移民の拡大による人口拡大とイギリス本国との軋轢の時期から、独立戦争、そして憲法制定頃までを解説しています。
アメリカとは独特な国です。
移民が集まって自ら築き上げた国家であることが大きな要因でしょう。
政治的あるいは経済的理由から階級が明確な祖国からアメリカに移民してきて自らを統治する国家を勝ち取ったという歴史的、思想的な基盤は他の国とは大きく異なります。
本書では教科書的なロックの自由主義的な思想というよりは徐々に形作られていった共和主義体制を独立の重要なファクターとしています。
考えてみると当たり前のことなのですが、アメリカの市民たちとイギリスの市民たちの環境は全く違うのであり、目指すべき国家観は全く異なります。
当時のアメリカの白人男性の土地所有率の高さは他国と比較して圧倒的で、そのような市民が中心となる国はやはり共和主義体制となるのでしょう。
一般的なアメリカ独立の本とは少し雰囲気が違いますが、視点が異なり面白いですし憲法制定の過程が詳しめで興味深い本です。

・はじめてのウィトゲンシュタイン(古田徹也)ウィトゲンシュタインの前期と後期および個々のトピックの断片を紹介している入門書です。
前期と後期で思想的な転回が見られる興味深い哲学者ですが、前期と後期の業績ともに大きな影響を与えた天才的な学者でありながら生きることに苦しみ、それこそ生きることとは哲学することであったような人です。
その業績と人間的な魅力はいまだに世界中の哲学者を惹きつけています。
本書ではウィトゲンシュタインの前期と後期の哲学を比較を交えながら初心者向けに易しく解説しています。
歳をとったせいか過去に学んだことをどんどん忘れていっているような気がします。
ウィトゲンシュタインに関する本はかなり読んできたとは思うのですが、忘れっぽくなっているおかげで読むたびに新鮮な驚きを得ることができています。
本書ではゲーテの形態学と詳細に比較しているのですが、ウィトゲンシュタインってゲーテの影響を受けていたっけと不思議に思いながら読んでいました。
初学者向けなのであまり知識がなくても十分理解できますが、当然の事ながら解説を省いている部分も多いです。
親切なブックガイドがついているのでより詳細に知りたいという人は、紹介されている本でさらに奥深くウィトゲンシュタインの世界に入っていくのをおすすめします。

・顔のないテロリスト(ダニエル・シルヴァ)アイルランドとイギリスでプロテスタントとカトリックの和平を阻もうとする同時テロが発生します。
イギリス政府はアメリカに和平を推進できる人物を求め元上院議員を大使として送り込み、大使の娘婿の元CIAのオズボーンもCIAに復帰してイギリスに向かいます。
そこでは更なるテロの計画があり、オズボーンに因縁のある暗殺者の影も見えてきます。
テロの陰謀の黒幕が今一つな設定でしたが、前半のテロ組織との対決から暗殺者との対決、CIA内部での争いとテンポよく進みます。
ちょっと話題的には古くなりましたが、アイルランド紛争をテーマにしているのもよかったです。

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