人生の暇つぶし

2016年にリタイアしました。アーリーリタイアや資産運用、旅、読書などのネタを徒然なるままに書き綴ります。

2016年9月のお奨め本

2016年9月に読んだ本の中でお奨めのものを紹介します。

・眼の誕生――カンブリア紀大進化の謎を解く(アンドリュー・パーカー)

カンブリア紀は突如多くの動物が出現する時代です。
これをカンブリア爆発と呼んでなぜこの時代にこれほど多くの動物が現れたのかは謎に包まれたままでした。
種の起源でもダーウィンがこのことの疑問に触れています。

遺伝的な急速な進化はカンブリア紀前に起こっており動物門もすでに揃っていました。
カンブリア紀の爆発は形態的な進化、つまり化石で確認できる進化が急激に進んだのです。
それではなぜこの爆発が起こったのかを解明しようとするのが本書です。

結論から言うとタイトルが示している通り眼の誕生が原因です。
光を利用することができるようになり、捕食とそれから逃れるための淘汰圧が急激に高まりました。
動物は捕食とそれに対抗する術を進化させないと生き残ることが突然難しくなってしまったのです。
硬い殻を手に入れたり、体色を変化させたりとカンブリア紀に生きた動物たちは様々な生きる術を身につけました。
現代でも光がなく眼を必要としない深海などの動物は進化のスピードがとても遅いのだそうです。

一見単純な原因ですがとても説得力があります。
もちろんこれがまだ決定版とまでは言えず、酸素濃度の上昇、気候の温暖化、生存環境の広がり、ゲノムの増加なども言われています。

眼の仕組み、光の仕組み、硬組織についての解説などとても面白いです。
ただ少しまとまりに欠けておりすっきりカンブリア爆発の解明に向かっていかない印象がありました。




・記憶を書きかえる―多重人格と心のメカニズム(イアン ハッキング)

多重人格(解離性同一性障害)がどのようにして現れ、どのようなものとしてとらえられてきたのかを精神分析の歴史や社会史から掘り起こします。
多重人格という病気が現れたのはつい最近のことで、19世紀にはヒステリーや二重意識などとされてきましたが、そこから70年代ごろからかなり患者が増えてきたとされています。
この頃は幼児虐待とセットで語られ、後には特に幼児への性的虐待が原因とされることが多くなります。
多重人格は社会状況と密接な関係がある症状だと言えます。

著者はその診断方法の危うさや概念ができることによる患者が増える問題などを説きます。
例えばカウンセリングによって明らかに人格は増えていくそうです。
それはカウンセラーと一緒に新たな人格をうむことになったり、患者がカウンセラーの期待に応えようとするからだそうです。
多重人格はカウンセラーと患者で作り上げていく面があるとも言えます。
だからといって人為的なものとは著者は言っておらず、ありのままに起こっていることを分析しようとする態度です。
また統計的な問題で、「人は直観で判断する」で紹介した疑陽性の問題に関連した基礎率についても述べています。

精神分析の出現によって人格は魂ではなく記憶が作るようになったと言います。
同時に過去というのは不確定であることを強調します。
精神分析のように幼児虐待などの新しい概念が獲得されるとその概念に基づいた過去の書き換えが行われます。
そのため多重人格者の記憶が妄想でなかったとしても過去が書き換えられることはあります。

本書は一般向けとは言い難く、膨大な文献を狩猟しフーコーの本のような細かい分析と思考の積み重ねをしています。
少々歯ごたえがあるかもしれませんが、おどろおどろしい多重人格の本ではなくきちんとした考察を読むには本書がおすすめです。




・解体諸因 (西澤 保彦)

9編からなる短編集。
独立した話ですが全体の関連性もあります。
本書がユニークで面白いのはすべてバラバラ殺人を扱っているということです。
死体をバラバラにする理由を9つも考え出すのは大変だろうと思います。

どれも軽い感じでユーモアあふれるバラバラ殺人を楽しめると思います。
著者の他の作品のような驚きはありませんが、気軽にさらっと楽しめる作品です。

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[ 2016/10/08 18:10 ] 今月のお奨め本 | TB(-) | CM(2)
はじめまして
はじめまして。
いつも面白そうな書籍のご紹介、ありがとうございます。歴史、生物の進化や哲学、精神・脳の構造などに興味関心があるので大変参考になります。
勿論、実践されている早期リタイアといったライフスタイルにも強い共感と憧憬の念を覚えます(私の場合、資産も収入も“控え目”なのでBライフ的傾向の生活になりそうですが)。
今後も自由で知的な生活が捗りますよう応援すると共に、
鋭い洞察力や該博な知識に基づいた記事を楽しみにしております。

つまらぬ指摘ではありますが「記憶を書きかえる」のご紹介の最後の項、膨大な文献を「狩猟」し、は「渉猟」ではありませんか。
違ってたらすみません。
[ 2016/10/11 12:15 ] [ 編集 ]
>Legionariusさん

はじめまして。

「渉猟」がもちろん正しいです。
誰も気づかないだろうと思って訂正しなかったのですがばれていましたね。

興味のある分野が似ていますね。
これらは個々の独立した知識ではなく横断した知識になったときこそ面白いなと感じています。
これからも興味の赴くままに読んで紹介していきたいと思っています。
リタイア生活の状況もちょくちょく書いていきます。
[ 2016/10/11 16:59 ] [ 編集 ]
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