人生の暇つぶし

2016年にリタイアしました。アーリーリタイアや資産運用、旅、読書などのネタを徒然なるままに書き綴ります。

2015年7月のお奨め本

2015年7月に読んだ本の中でお奨めのものを紹介します。

・犬の力 (ドン・ウィンズロウ)

アメリカ麻薬取締局のアート・ケラーと因縁のあるラテンアメリカの麻薬カルテルの盟主バレーラ一統との30年に及ぶ争いを描いています。
殺し屋、高級娼婦、人望を集める枢機卿、ケラーとバレーラたちの争いに好むと好まざると巻き込まれた人たち。
暴力と政治的陰謀、ラテンアメリカでの共産主義の封じ込め政策、様々な思惑が絡み合い血で血を洗う30年の物語が疾走します。

私の好きなタイプの冒険小説です。
因縁のある麻薬取締捜査官と麻薬カルテルの盟主。
平穏な生活を送る人とは対極にある登場人物ばかり。
暴力が暴力が呼ぶ壮絶な戦い。
そして最期に救いが訪れることはない。

メキシコの麻薬戦争という物語をこのようにまとめあげたのは見事だと思います。
30年という長い期間であるため中だるみや端折りすぎなところもありますが、船戸与一が好きな人にはたまらない世界でしょう。



・開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU― (皆川 博子)

18世紀のロンドンで解剖学教室を開く外科医ダニエルとその弟子たちは解剖学に情熱を注いでいました。
そして田舎から詩人を夢見て才気溢れる少年がロンドンに出てきて解剖学教室の弟子とも交流します。
しかし教室から見たこともない遺体が発見されてしまいます。
盲目の治安判事が解剖学教室の面々の協力を仰ぎながら推理で真相に迫っていきます。

18世紀のロンドンという舞台設定が面白いです。
当時の解剖学の位置づけと先端科学、警察組織などの説明描写が興味深いです。

治安判事が推理で真相に迫っていく本格小説と言えますが、ストーリーそのものの面白さのほうが印象に残ります。
弟子たちに愛されるダニエルと個性的で陽気な弟子たちは犯罪に関わっているのか。
詩人を夢見る少年の運命は。
最期はうまさを感じさせて読後感も良いのものでした。

ちなみに皆川博子がこの作品を執筆したのは80歳ごろです。
凄すぎます。




・英仏百年戦争 (佐藤 賢一)

英仏百年戦争に絞った解説書でその概略を知るには最適の本だと思います。
佐藤賢一が書くととても分かりやすいです。
さすがに小説家は読者を引き込むこと、分かりやすく伝えることに長けています。

面白いのが百年戦争はフランスの勝利に終わるとされているのにイギリスではイギリスの勝利で終わると信じている人が多いということです。
これはシェイクスピアの影響が大きく、彼のイングランドびいきの劇をそのまま信じているらしいのです。
ただそもそも英仏百年戦争と区切り始めたのは19世紀になってのことでシェイクスピアが意図的に勘違いさせたわけでもないのですが。
自分の国を勝利者にしたいのは万国共通のようです。

そもそもこの戦争の発端はフランス内部の争いです。
イングランドを支配していたフランスのプランタジネット家が失ったフランスの領土を回復しようとして戦争がはじまります。
イングランドもフランスも両方ともフランス人が支配していたわけで英仏百年戦争と言ってしまうとミスリーディングな部分があります。
現在のイギリス人が当時のイングランドをかたに持ったところでその支配者たちはフランス人だったわけです。

百年戦争の初期は支配者たちの争いだったのが、徐々にフランス国家、イングランド国家を形成していったのが百年戦争だという著者の解説はうなづけるものがあります。
最期の頃にはイングランド王はフランス語を話せなくなっておりまさしくイングランド人になっていたのでしょう。

それにしても百年戦争やもう少し後の三十年戦争などこの頃のヨーロッパは近代へ向かって様々な動きが現れた時期でとても面白いです。

ちなみにジャンヌダルクが注目されたのはナポレオンの影響が大きいそうです。
民族主義が強くなる時代で国家の英雄を必要としたのでしょう。
ここからジャンヌダルク人気が高まり20世紀にはとうとう列聖されることになります。

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[ 2015/08/08 12:20 ] 今月のお奨め本 | TB(0) | CM(6)
そういえば100年戦争って言葉は有名ですが、はっきりどういう背景か知らなかったです。
いつか読んでみます。
[ 2015/08/09 23:34 ] [ 編集 ]
>招き猫の右手さん

読みやすいので是非読んでみてください。
日本の中世とは争いの方法が随分と異なっていて面白いです。
[ 2015/08/11 00:04 ] [ 編集 ]
英仏百年戦争読みました。
元々は大陸を追われたフランス貴族がイングランド王になったのですね。
英国王にとっての対フランス戦争は帰還運動のようなものだったのですね。
でも結果的に、これで英仏という国家の概念が固まっていく流れになりました。英国は英国になり、元々地方豪族が強かったフランスもこれで絶対王政のフランスへと繋がっていくのですね。
よく分かりました。
[ 2015/10/06 17:27 ] [ 編集 ]
>招き猫の右手さん

このあたりの歴史を学ぶといかに現代人が現代の物差しで歴史を見ているかが分かりますね。

中世から近代にかけてヨーロッパの各国の王族は皆が親戚というのも面白いです。
[ 2015/10/06 23:32 ] [ 編集 ]
この時代ですら古典的なやり方でしょうが、力を得るためには自分の息子や娘を相手に差し出して、あるいは要求して婚姻関係になって、、、というのを繰り返しているようですから、そりゃ全員が親戚みたいなもんになっていきますよね、これは洋の東西を問わずそんな感じでしょうね。
[ 2015/10/09 16:29 ] [ 編集 ]
>招き猫の右手さん

ですね。
昔の西洋の姻戚外交の流儀を日本の戦国、江戸時代あたりと比較すると面白いです。
西洋は何というか戦争でさえ単なる上流階級の親戚同士のゲームみたいです。
[ 2015/10/10 16:58 ] [ 編集 ]
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