人生の暇つぶし

2016年にリタイアしました。アーリーリタイアや資産運用、旅、読書などのネタを徒然なるままに書き綴ります。

2014年12月のお奨め本

2014年12月に読んだ本の中でお奨めのものを紹介します。

・太平洋の薔薇 (笹本 稜平)

フリーの船長を務める柚木静一郎は長い船員生活を終えようとしていました。
最後の船は自分が初めて船長を務めたパシフィックローズで一人娘を乗せたこともある思い出深い船でした。
しかし横浜へと向けて航海中にハイジャックを受けて船を乗っ取られてしまいます。
ハイジャックは単なる金銭目的ではなく、裏では世界を揺るがすテロ計画が進行していました。
柚木はテロリストの命令を受けて嵐の中へと船を進ませます。

前半はテロに関連して各地で進行していく物語が切り替わっていきます。
様々な登場人物が出てきてその人の人生とテロが交錯していきます。
後半ではそれらの物語がパシフィックローズへと無理なく自然につながっていく様にうまさを感じます。
最初から大団円が見えているような展開ですが、柚木をはじめとしてテロに立ち向かう熱い人間たちのドラマに引き込まれていくと思います。

この作品では分かり易い人物ばかりが出てきます。
人望が厚く優れた船長である柚木は不屈の精神で船員たちと船を守ろうとします。
パシフィックローズを追う海上保安庁の巡視船の船員たちは上司と対立してでも彼らを助け出そうとします。
テロ計画の周りで動くCIAやFSB(KGB)も自分の職務を全力で全うしようとします。
悪役たちも単純な怒りや狂信といったものでそこに複雑な感情はありません。

しかしこれはこれでよくて誰もが楽しめ最後は目頭が熱くなる極上の海洋冒険小説として仕上がっています。
ただその分後半が少し都合よくいきすぎるのがどうかなと思いました。
ハリウッド映画にするとよさそうな作品です。




・無限論の教室 (野矢茂樹)

無限論の講義を取ってしまった二人の学生が先生の講義で無限論の世界へといざなわれていきます。
学生からの視点で講義を描かれており、アキレスと亀の話から、カントールのパラドクス、ラッセルのパラドクス、ヒルベルトプログラム、そしてゲーデルの不完全性定理へと講義が進みます。

無限とはいったいどのようにとらえたらよいのでしょうか。
そのようなことを分かり易く一歩一歩解説してくれています。
ゲーデルの不完全性定理については私にとってこれまでで一番分かり易い説明でした。

無限の考え方として無限が実際に存在するという実無限の立場とあくまで可能性でしかないという可能無限の立場があります。
例えば可能無限では2の平方根は計算規則を表しており、展開できたところまでが存在してそれ以降は存在しないと考えます。
この二つの立場のせめぎあいが無限論の歴史と言っていいでしょう。
せめぎあいから無限論に関する矛盾が発見されそれを解消する努力をしてきたのです。

カントールやラッセルが指摘した矛盾は可能無限の立場を強くするものでした。
可能無限の立場を認めてしまうと自然数や無理数の集合なんてないということになり、特に問題なのは排中律が成り立たなくなることです。
そこでヒルベルトが無限集合論を守ろうと形式化した公理系とその完全性を証明するメタ数学を提唱することになります。
しかしゲーデルの登場で完全な自然数論の公理系を作ることはできず、有限の立場のメタ数学では自然数論の無矛盾性は証明不可能とされてしまいます。
無限論という誰が興味を持つのかというようなものに歴史的に熱いバトルが繰り広げられてきたのに感動を覚えることと思います。
一部の変わり者のひとだけでしょうけど。

これらの解説の中で対角線論法という言葉が頻出します。
これを使うとこれらの矛盾を分かり易く説明できる恐るべきツールなのですが、興味ある方は本書を読んでみてください。

無限なんてものに興味を持つ人は多くはないと思いますが、少しでも興味があれば本書から入るのお薦めです。
そして無限の実在の証明とは、普遍、すなわち神の存在の証明とも言えるのです。




・推定無罪 (スコット トゥロー)

地方検事選挙の選挙戦が繰り広げられる地方都市で敏腕の女性検事が殺害されます。
選挙に立候補している地方検事から捜査にあたるように言われた首席検事のラスティーですが、彼は被害者の女性検事と不倫関係にありました。
そして地方選挙が終わるとこの事件にラスティーの人生が大きく翻弄されることになります。

純文学を志していたけれども検事の世界に転向したという著者だけあって重厚な文章、心理描写と細かな法廷描写が際立っています。
上巻の延々と続く伏線から、下巻の法廷シーンで加速度的に展開していきます。
特に法廷シーンは圧巻です。
言葉による駆け引きの面白さが素晴らしく、意表を突くどんでん返しなどよりはこの法廷シーンのほうがのめりこんでしまいました。
判事の役割、証拠の扱い方、陪審員の立場などどれをとってもその制度の特色を法廷シーンの面白さに生かしています。
リーガルサスペンスの傑作と呼ばれるだけはあります。

読んだことがあるはずだよなと思いつつ読んでいたのですが、最後の最後でようやく読んだことがあることに気づきました。
最近同じ本で初めて読んだ感動や驚きを何度も覚えるのは老人力であると思えるようになってきました。


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[ 2015/01/10 17:30 ] 今月のお奨め本 | TB(0) | CM(0)
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