人生の暇つぶし

2016年にリタイアしました。アーリーリタイアや資産運用、旅、読書などのネタを徒然なるままに書き綴ります。

2014年11月のお奨め本

2014年11月に読んだ本の中でお奨めのものを紹介します。

・世紀の空売り―世界経済の破綻に賭けた男たち (マイケル ルイス)

サブプライムローンで金融街が我が世を謳歌していた頃にサブプライムローンが破綻することにかけた男たちの物語です。
実際にCDSを買い捲った人たちを丹念に取材しています。
渦中にいた人物を主人公に据えているので、サブプライムローンが膨らみそして破滅へと近づいて行く様子が臨場感に溢れています。
破綻するまでは彼らが破たんにかけたのはもしかして間違いだったのかとハラハラするほどです。

この本を読んで思ったのはもしかするとサブプライムローンの破たんはそれらに関わる人は皆が理解していたのではないかということです。
なぜなら次々とローン商品を開発して売りまくった人たちは明らかに自分のしていることを認識していたからです。
返済能力のない人に貸し付け、格付け会社を誤魔化していたのはそうでないと商品を作れないからであり、高い格付けを得られなかったからです。
面白いのは最初は破綻にかけていたトレーダーがCDSの保証料を目当てにCDSを売ってしまいそのまま暴落を迎えてしまったケースがあることです。
CDSを買うと保証料を支払うので実際にサブプライムローン危機が発生するまでは損失が続くためにつなぎの収入に目がくらんでしまったようです。

ではなぜ十分にそのあくどさを知っていた本人たちが破たんしてしまったのでしょうか。
それはそんな大惨事が起こるわけはないというある種の認知的不協和のように思います。
CDSの買い手を探していたドイツ銀行のトレーダーの説明に皆が納得するのに、しかし買おうとする人がいなかったのはとても面白い現象です。

これは何かに似ていると思います。
日本の財政破たんの可能性です。
現状では数年で日本の財政が破たんしたり、高インフレになる確率は大きくはないでしょう。
しかし10年前に比べて格段に確率は上がっています。
そうすると不思議な理論を主張する人が出てきます。
いわく、これまで金利が上がっておらず破綻もしていないのだから破綻しない。
日本は海外資産を多く持っている。
政府は多くの資産を持っている。
国債の大部分は日本人が債権者である。
よってそんな悲惨なことは起きない。
これこそ認知的不協和の例でしょう。

サブプライムの破たんに賭けた主人公の一人は誰もが手に入れられる資料を丹念に読むと破綻は明らかだったと言います。
目の前にある確かな事実だけを積み上げて判断の根拠とすることは投資では最も大切なことです。
しかし大抵の人は見たくない事実は見ず、自分に都合のよい事実だけを見てしまうようです。

以前から疑問に思っていることがあるのですが、CDSを買って実際に信用事由が生じたとしても相手方から支払いを受けられる確証はどうやって得られたのかよく分かっていません。
この本ではサブプライムローンのCDSを開発する際の話し合いや主人公の一人が契約内容についてCDSの売り手の支払い能力について言及するシーンがありますが、あまりよくわかりませんでした。
結局はAIGのケースではアメリカ政府が支えたわけですが。
ちなみに物価連動国債についても政府の支払い能力はどうなのかと疑問に思っています。
なぜなら物価連動国債がインフレに強くてもインフレが進んだ時には日本の財政破たんまでいかなくてもそのリスク分は価値が下がるように思えるからです。

ノンフィクションとしては物足りないところがありますが、カラ売りに賭けた男たちの視点からサブプライムローン騒動を見るのは新鮮で面白いです。
エコノミストの解説書に飽きた人には一読してほしいです。




・女王国の城 (有栖川 有栖)

新興の宗教団体として成長著しく、美しい女王が統べる人類協会の聖地、神倉。
アリスたち推理小説研究会の面々は神倉に行ったらしい部長の江神を心配して神倉に行くことになります。
人類教会で無事に江神と再会を果たしたアリスたちですが、人類教会の内部にいるときに殺人事件が起きてしまいます。
そして人類教会の幹部たちは警察に通報することもアリスたちが人類教会から出ることも拒否します。
軟禁のような状態になったアリスたちは自分たちで犯人を見つけようとしますが、やがて第二の殺人事件が起きることになります。

様々な伏線が最後につながっていきすべてがクリアになるというミステリの醍醐味を楽しめます。
最後に点が線となるときの点が多いほどおおーっとなるのですが、本作は特にうまいなあと思わせる伏線をたくさん仕込んでくれています。
最後に一気に霧が晴れるような江神の推理には感服します。
しかし本格部分はとても素晴らしいのですが、一方でストーリー自体はあまり引き込まれるものではなく、必要性が感じられないシーンが長いようにも思えました。
あとは語り手がアリスとマリアで交互に交代していくのですが、何故こんなことをする必要があるのかよくわかりませんでした。
とはいえ著者のうまさを十分に堪能できる作品でお薦めです。



・ドゥルーズ---群れと結晶 (宇野邦一)

ドゥルーズの重要な概念を紐解きつつ、スピノザやデカルト、レヴィナス、柄谷行人などを参照しながら著者のドゥルーズ理解を展開しています。

私はドゥルーズの思想がよく分かりません。
ドゥルーズに関する本を読んでもどうにも腑に落ちることがないのです。
リゾームや器官なき身体のようなキャッチ-なキーワードを生み出し、外部と差異を自在に操ってつかみどころのない思想を展開しているように見えてしまいます。
そのため各々の叙述は理解したり納得したりしてもそれらの関連が私にはあいまいで有機的に結びつかないような気がするのです。
私には詩的なものより体系的で論理を積み上げていく哲学のほうを合うようです。
そして人間の生に対して真正面から問うような力を持つ哲学が好きなのです。
私の側の力量不足でもう少し読み込んでいけばいつかドゥルーズを受け入れられるレベルに到達できるのかもしれませんが。

とは言え本書は非常に分かり易い入門書となっています。
重要な概念の関係やほかの哲学者を紐解いていた解説には新たな発見があるでしょう。
ドゥルーズの世界を覗いてみたい人には良書だと思います。
ただし入門書と言えどついて行くにはそれなりの思想的素養がないと厳しいかもしれません。

ところで本書の表紙には次のようにあります。

日本を代表するドゥルージアンによる世界で最も美しいドゥルーズ的実践

著者が日本を代表する人ではあるのでしょうが、世界で最も美しい実践とは恐れ入ってしまいました。


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[ 2014/12/14 11:33 ] 今月のお奨め本 | TB(0) | CM(4)
お、このマイケル・ルイスってもしかしてマネー・ボールやブラインドサイドを書いたあのマイケル・ルイスですかね。
てっきりスポーツ関連専門ライターなのかと思ってました。
こんな本も書いてるんですね、いつか読んでみます。
日本の財政破たん、ほんとにいつかあるかもしれません、絶対無しといえるような状況では無くなってきましたね。
[ 2014/12/15 00:48 ] [ 編集 ]
>招き猫の右手さん

そうです。
もともとはソロモンの債券部門で働いた後にソロモンの内幕を描いた「ライアーズ・ポーカー」でブレイクした人です。
「世紀のカラ売り」とセットで読むと面白いです。

日本の財政破たんはやはり可能性が出てきていると思います。
金融緩和の反動が急激になるとまずいでしょうね。
増税、歳出削減、インフレ、金融抑圧の4点セットの可能性が高いのだとは思いますが。
[ 2014/12/15 23:41 ] [ 編集 ]
ライアーズ・ポーカー
ライアーズ・ポーカー、読みましたよ!
なかなか面白かったです。
[ 2015/01/15 01:04 ] [ 編集 ]
>招き猫の右手さん

良かったです!

金融ものや骨太なノンフィクションはやっぱりアメリカのほうが面白いものが多いと思います。
[ 2015/01/15 23:53 ] [ 編集 ]
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