人生の暇つぶし

2016年にリタイアしました。アーリーリタイアや資産運用、旅、読書などのネタを徒然なるままに書き綴ります。

2014年8月のお奨め本

2014年8月に読んだ本の中でお奨めのものを紹介します。

・サクリファイス (近藤史恵)

自転車競技でプロのロードレースチームに所属する白石。
チーム競技であるロードレースでアシストの役割を果たすことに白石はやりがいを見出していました。
ライバルと熾烈な駆け引きをしつつ国内各地を転戦しヨーロッパにも遠征しますが、そこである悲劇が起きます。
白石はその悲劇に疑問を持ち真実に近づいていきます。

自転車競技の魅力がとても分かり易く描写されています。
私は自転車のレースについてはチームスポーツということぐらいしか知りませんでしたが、競技の解説がスムーズに挿入されているため全く詰まることなく楽しめました。
レースではチームのエースのためにアシストはすべてを犠牲にしなければならず、エースの自転車にトラブルがあるときにはアシストは自転車を差し出すことさえあるそうです。
表彰台にのって名前が残るエースとの差はとても大きく、まさにアシストの犠牲の上にエースの勝利があるのです。
このような競技でのチームのエースとアシストの葛藤やレースの駆け引きなどの魅力がとてもよく伝わってきます。

ミステリ要素もあるのですがこれもミステリというよりは競技の魅力を引き立たせるようなものです。
ミステリというよりは自転車競技のアシストという役割に打ち込む白石という若者の小説です。

自転車競技に詳しい人がどのように感じるかは分かりませんが、素人の私は競技の面白さにどっぷりはまることができました。



・一神教の起源:旧約聖書の「神」はどこから来たのか (山我哲雄)

一神教はどのようにして生まれてきたのか。
旧約聖書を中心に聖書外資料も使い、古代イスラエルで信仰がどのように変化してきたのかを最新の研究から解き明かしています。

無茶苦茶面白いです。
私は古代イスラエル史が好きで関連する本をよく読みますが、中でもこの本が一番面白いように思えました。

イスラエル民族がどのようにして出現したのか、ヤハウェはどこから来たのか。
社会状況によって変化する多神崇拝と唯一神崇拝の葛藤、何度となく起こる宗教改革。
これらを研究者はどのように旧約聖書から読み解いていくのかを知るのは非常に面白いです。
名前の付けられ方、言い回し、文法などから見事にヤハウェの起源や時代時代の神観念を解き明かしてくれます。

本書ではバビロン捕囚時代に唯一神崇拝が成立すると見ますが、民族の唯一の神から人類唯一の神となる一神教が成立したときキリスト教が成立するのは必然であったのでしょう。
必読です。




・数量化革命(アルフレッド・W・クロスビー)

ヨーロッパで中世に起きた世界認識の変化を数量化という点から読み解いていきます。
それまでの世界認識はプラトンに代表されるような本質を中心としたものでした。
世界は均質化されておらず、不均質なものとして存在していました。
そもそも中世以前の人々は正確に計るという必要性を感じていませんでした。
料理本の例が本書で挙げられていますが、材料の分量があまりにも適当な表現なのです。

本書では数量化革命を時間、空間、絵画、音楽、数学、会計などで起きた認識の変化から解説します。
正確な暦が作成され、実用的な地図が発明され、遠近法が発明され、記譜法が発明され、数から意味が剥奪され、複式簿記により儲けや資産が正確に分かるようになります。
すなわち世界が均質化されることによってすべては数値で正確に表現されるようになったのです。
これらはすべて後の科学革命へとつながる認識の革命と言えるでしょう。
本質を問わず外部に現れるものを数値化することで人々はよりシンプルに実用的な仕組みを生み出し、そのことがヨーロッパが世界に先駆けて産業革命を起こすことができた要因かもしれません。

現代社会では何もかもが数量化されています。
数量化されないものには不安を感じるほどです。
しかしこの当たり前の思考が中世以前では当たり前でなかったことに、世界認識の変化の面白さとその世界を変えてしまうほどの影響力を感じます。

これも必読です。



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[ 2014/09/13 17:37 ] 今月のお奨め本 | TB(0) | CM(8)
サクリファイス
ミステリとしてはいまいちかもしれませんが、自転車小説としてはよく出来てます。関西の自転車乗りなら暗峠のくだりは面白いでしょうね。
[ 2014/09/14 20:40 ] [ 編集 ]
>さいもんさん

やっぱり自転車の経験がある人にも面白いですか。
自転車がテーマの小説なんて万人受けしないのではと最初は思ったのですが、ここまで読みやすく面白くかけるなんて作家というのはすごいものですね。
[ 2014/09/15 00:16 ] [ 編集 ]
学生の時に、単に単位を取りやすいから、という理由で宗教学というのを取ったんですが、結構内容が面白かった記憶があります。砂漠の宗教がなぜ一神教なのか、とか。
山我さんのその本、機会があったら読んでみたいと思います。
[ 2014/09/16 12:53 ] [ 編集 ]
>招き猫の右手さん

面白いのでぜひ読んでください!

ちなみに一神教と砂漠の関連は日本では和辻の「風土」の影響で語られることがありました。
しかし現在では和辻の論はほぼ完全否定されています。

以前にイスラム学の横断的研究で「イスラームの都市性」というかなり大がかりなプロジェクトがあったのですが、イスラーム=砂漠じゃないんだぞということを言いたかったんだと思います。
[ 2014/09/17 00:26 ] [ 編集 ]
和辻って和辻哲郎さんでしたっけ。

さきほど、近所の図書館から該当の本の確保のメールが来ました。
さっそく今日図書館に寄って借りて土日にでも読みたいと思います。
[ 2014/09/18 10:23 ] [ 編集 ]
>招き猫の右手さん

そうです。和辻哲郎です。
和辻の「風土」は批判が多いのですが、私も根拠のないこじつけが多いと思いました。
ただ読み物としては面白いです。
[ 2014/09/19 00:10 ] [ 編集 ]
遅ればせながらサクリファイス読みました。
完全に運動目的でロードバイクを買って数ヶ月ですが特にレースには興味ありませんでした。
これを読んで俄然興味がでました。次は役割を考えてTV観戦したいと思います。
本作者の続編も読みたくなりました。

よい本の紹介ありがとうございました。
[ 2014/11/21 07:21 ] [ 編集 ]
>YYYさん

面白かったようで良かったです。

自分が興味を持っていなかったようなことでも娯楽小説で読んでその世界の面白さや奥深さを知ることがよくあります。

小説家の手にかかると自分が興味のなかった分野のことでも引き込まれてしまう魅力あふれる世界が出来上がるのは本当にすごいなといつも感心します。
[ 2014/11/22 11:07 ] [ 編集 ]
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