人生の暇つぶし

2016年にリタイアしました。アーリーリタイアや資産運用、旅、読書などのネタを徒然なるままに書き綴ります。

2014年7月のお奨め本

2014年7月に読んだ本の中でお奨めのものを紹介します。

・警官の血(佐々木 譲)

戦後、安城清二は警官の道を歩み念願であった派出所勤務となります。
しかし派出所勤務になって間もなく近所の五重塔の火事騒ぎが起きたときに謎の死を遂げます。
やがて父のような警察官に憧れて長男の民雄も警察学校へ入学しますが、与えられた職務は左翼グループへの潜入でした。
そして民雄の長男、和也も警察官となり、祖父の死の真相にたどり着くことになります。

このような何代にもわたる大河小説は私の大好きなジャンルの一つです。
時代の空気が変わっていく中で主人公が親から主役の座を引き継がれていくのは、それだけでワクワクしてしまいます。
なので大河小説はそれだけで評価もアップしてしまいます。

本書は何か物足りないものがあります。
一番は清二の死の謎が引っ張られるのでやはりこれがテーマとなってしまっていることです。
それにも関わらずこの謎の真相や真相に迫るプロセスが期待外れでした。
やはりミステリではなく警察小説として読むべきでしょう。
三者三様で警察官としての職務の全うの仕方が異なるけれども、3人とも警察官が自分の人生そのものだと信じて生きる姿は読みごたえがあります。

期待ほどではないけれどもやはりこういう親子何代にわたる小説は面白いということで紹介しておきます。
またアマゾンなどを見るとかなり評価が高いようです。




・哲学の三つの伝統 他十二篇 (野田又夫)

前半部と後半部に分かれています。
前半はギリシア、中国、インドで同時期に生まれた哲学を大きなパースペクティブで通覧しています。
この三つの地域で生まれた哲学は多種多様な哲学的立場を生み出し、その後の人間の思想の可能性の原型を網羅しています。
大まかにギリシアでは論証法、中国では修辞法、インドでは弁証法が発展したと述べます。
そして西洋哲学ではキリスト教という神話に対して再び哲学が生まれ、そして数学的自然観による世界認識が芽生え近代の哲学が生まれてきます。
これらは非常に分かり易く容易に読めますが、一方で常識的な考えを述べているだけのようにも思えました。

後半は野田が直接学んだ西田幾多郎、田辺元らの京都学派についての文章です。
哲学者の多くは一度は大きな思想的転回を経験します。
それらがなぜ起きたのかは大変興味深いものですが、野田の西田、田辺の思想的転回とお互いの思想的関係を述べた章は特に面白く、身近で見ていたからこそ書けることもあるでしょう。
しかし前半部とは違いある程度西田や田辺について知らないと理解するのが難しいと思います。




・イスラームの「英雄」 サラディン――十字軍と戦った男 (佐藤次高)

アイユーブ朝を創り十字軍と戦ったサラディンの評伝です。
何故かサラディンはイスラム世界だけでなく、西欧世界でも騎士道精神を持ち寛容さと勇気を持つ英雄として褒め称えられています。
そんなサラディンの生涯をできるだけ実像に迫った作品です。
英雄譚は排除してサラディンがどのような経緯でアイユーブ朝創設に至ったのか、十字軍と戦いエルサレムを奪還したのか政治状況とともに書かれています。
歴史上の英雄の人物伝を気軽に読めて読んでいて楽しいです。

しかし事実を淡々と書いているような印象を受けて物足りないものを感じました。
サラディンの政策や戦争の分析、当時のイスラム、キリスト教世界での評価のされ方などをもう少し詳細に書いてほしいと感じます。
どうにもサラディンの事績は分かったが、その存在が歴史上どういう意味を持ったのかがつかめませんでした。
しかしイスラム圏の人物評伝は日本語ではあまりないので貴重な仕事だと思います。

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[ 2014/08/09 11:55 ] 今月のお奨め本 | TB(0) | CM(0)
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