人生の暇つぶし

2016年にリタイアしました。アーリーリタイアや資産運用、旅、読書などのネタを徒然なるままに書き綴ります。

2014年4月のお奨め本

2014年4月に読んだ本の中でお奨めのものを紹介します。

・正義のアイデア(アマルティア セン)

正義を実現するにはどのようにすれば良いのか。
ロールズの正義論に批判を加えながら検討していきます。
センの立場は徹底的なロールズ批判です。
もちろん正義論を深めたロールズの仕事は高く評価していますが、基本的には現実世界には適用できない正義論だと言っています。

センは正義とはいったいどういう状態であるのか、そして現実の不正義をいかに減らしていくべきかを検討します。
そのため体系的な議論ではなく正義のアイデアなのです。
所得や自由だけではなく、利他性、ケイパビリティ(自分が潜在的に選択できる能力)、アイデンティティの複数性から正義について論じています。
正義の実現については全体的な正義は後回しにしても、今そこにある不正義が除かれることを優先されることを重視します。
そのため相いれない複数の正義の立場が併存してもよいし、部分的な解でもよいとしています。
確かにこのような考えはロールズの議論には見出しにくいでしょう。
社会契約論の系統になるロールズの演繹的な正義論は現実に適用するのは不可能であり、少しずつ近づいていくべき究極の目標ともなりえないのです。

正義を実現するためにセンが特に重視するのは民主主義です。
民主主義の本質は選挙ではなく、開かれた討議であると主張します。
アダム・スミスの「内なる公平な観察者」を引用して常に立場の異なる意見を取り入れて討議をすることが正義の実現にとって最も重要であると強調しています。
この開放的な世界の議論はロールズの閉鎖的な世界と比較して何度も論じています。

素晴らしい本です。
体系的な理論を語るのではないですが、体系的に議論を進める見本のような本です。
ある議論を提示してそこで考えられる疑問にきちんと答えて次の議論に進んでいくようになっています。
私は何度もロールズへの批判について疑問を持ちましたが、それについてほぼすべてと言ってよいほど答えてくれています。
はっきり言ってその結論の一つ一つは平凡なものです。
しかしそこに至るプロセスは何度でも味わうべきものです。
世界を代表する知性が考え抜くということはこういうことかときっと思い知らされることでしょう。

大学生の必修科目としてこのテキストを使ってほしいぐらいです。
東大や京大を目指すような進学校であれば高校生でも読ませるべきです。
きっと理解できると思いますし、進学校の高校生であればロールズやセンの基本的な考えは知っておくべきでしょう。
と言いつつ私は高校生の時ロールズやセンなんて名前しか知らなかったですが。
もちろん政治家にも読んでほしいですが、こういう本を世界中の政治家が読んでいるなら少しはまともな政治が行われるだろうにと何度も感じました。




・資本主義は嫌いですか―それでもマネーは世界を動かす(竹森 俊平)

サブプライム問題について読み物風に一般向けに書かれた解説書です。
バブルとはどういう現象であるのかの解説、ラジャンの有名な学会発表についての解説、サブプライム問題の発展の時系列での解説などがされています。

分かりやすい解説です。
これを読んでおけばサブプライム問題とはなんであったかが大体理解できるでしょう。
金融に関心があるような人であればそれほど難しくないと思います。

私が特に興味深かったのはラジャンの2005年の学会発表の解説です。
サブプライム危機を正確に予測したことでラジャンが一気に世界的なエコノミストとなるきっかけとなった学会です。
それまでも高名な研究者であったそうですが、一般の人までその名を知ることになるのはやはりこの学会での報告でしょう。
そのラジャンの報告にサマーズやフィッシャーなどがどのようなコメントをしたのかを説明しており非常に興味深いものでした。
さらに興味深いのはサブプライム危機の前にエコノミストは次の経済危機は流動性が問題となることを予測しており、その対処法方法が分かっていたということです。
分かっていたからこそあれほど迅速な対応が取れたということです。

他に最近の世界経済の構造変化とバブルの発生についての関係も明快に論じています。
発展途上国が資金余剰になったことはやはり決定的な変化と言えるでしょう。
またバブルの功罪についてモデルを使っても解説しているのですが、これが今一つ理解できませんでした。
投資収益率が成長率を上回る場合はバブルが経済効率を改善するというモデルは単純化した世界のみで成立するものであり、現実の世界では適用不可能なのではという疑問は消えませんでした。
クルグマンのインフレターゲットのモデルに感じた非現実性と同じです。
また経済効率を金融で論じることに果たしてどれだけ現実の世界で役立つのかも私は疑問に思います。
その効果はあまりに不確実であり、個々の産業政策のほうがよっぽど効果が明確であり重視するべきではないでしょうか。



・臨場 (横山秀夫)

「終身検視官」の異名を持つ倉石が殺害現場で犯人にたどり着く痕跡だけではなく、加害者、被害者の思いまでも掬い取る警察小説の短編集です。

テレビドラマを先に見ていたのですが、テレビとはかなり違う雰囲気で面白いです。
登場人物の描き方も大分異なりますし、小説では主役の倉石がそれほど出ずっぱりではありません。
むしろ半分ぐらいは脇役となっています。
テレビ化されるときにどのように人物やストーリーが書き換えられているかを確認するのも楽しい作業です。
確かにこの小説は原作を忠実に再現して映像化するのはあまり一般受けしないかもしれません。

倉石の観察力による推理というよりは事件に関わる人たちの人間ドラマといった仕立てです。
捜査する側の警察官の人生や、被害者の人生が事件を通して浮かび上がらせる描写はさすがです。
もちろん倉石の推理が見所の短編もあります。
一つ一つが完成度の高い短編集でお薦めです。


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[ 2014/05/18 13:12 ] 今月のお奨め本 | TB(0) | CM(0)
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