人生の暇つぶし

2016年にリタイアしました。アーリーリタイアや資産運用、旅、読書などのネタを徒然なるままに書き綴ります。

悲惨な氷河期世代と言うけれど

今年、悲惨な就職氷河期世代というような話が多かったように思います。
政府による氷河期世代への支援の話が急に出てきました。

私は団塊ジュニアで就職氷河期でした。
私の世代はとにかく人が多かった印象があります。200万人を超えていました。
小学校は30人学級なんて言いますが私の頃は60人学級で、当時の先生は大変だったろうなと思います。
大学受験もかなりの狭き門で国立大学は臨時の定員増がありました。
高校の先生によると当時の関西の二番手グループであった大阪大学と神戸大学文系であれば現在の京大に合格できるぐらいだそうです。
当然大学受験に失敗する人が多く、同級生の3分の1ぐらいは浪人していました。
今時の受験生は浪人はどれぐらいするのでしょうか。

やっとこさ大学に入っても大学卒業時にはバブル崩壊で新卒採用が壊滅状態でした。
誰もが知る一流とされるような会社は一流大学の学生でも落ちて普通だったと思います。
公務員は何故かそれほどは人気がなくて当時は関関同立レベルであれば落ちることはなかった印象ですが。
教員採用試験では人気のところでは50倍ぐらいありましたが。
大卒新卒の求人倍率が1倍を切っていたそうですから非正規として働かざるを得なかった人も少なくないでしょう。
第二新卒なんてものはほとんど受け入れてもらえませんでした。

それでも何とか就職しても上にいるのはバブルを謳歌した後は仕事しないおじさんさたちやバブル期に就職したやたらと多い先輩たちがいました。
後輩はなかなか入ってこず、30代に入るとポストがなく出世が難しくなり、年功序列が弱まるにつれ40代になっても給料が上がらない世代になってしまいました。
正社員であっても割を食った大変な世代です。

確かに悲惨といえるかもしれません。
現在はましになりましたが日本の会社のシステムが新卒絶対主義でしたし、上の世代のツケを真っ先に被った世代といえるでしょう。
けれども悲惨な氷河期世代とばかり言ってしまってよいものだろうかと疑問に思ってしまいます。
悲惨な人なんて世代とは関係なくどこにでもいます。
運悪く正社員になれなかった人、ひどい家庭環境に育ったり、病気やけがで仕事ができなくなったりする人なんてどの世代もいます。
当事者が時代のせいだと言ってしまうと単なる自己憐憫や言い訳のスパイラルに陥ってしまわないのでしょうか。
それで誰かが助けてくれるならいいのですが、そうでないなら益々悲惨になっていくだけではないでしょうか。

現状に甘んじろというのではなく、自分たちは運が悪いとか悲惨とかいうのではなく公平な制度を求めることが大事なのではないかと思います。
そうでないと他の世代の苦境にある人には目を向けず、単に俺らの世代を救済しろと言うだけになってしまいます。
結局悲惨というのは経済的なパイの問題に落ち着いてしまい、そしてそれは公平な競争を求めるべきであって、とにかくそれを俺に寄越せでは根本的な解決にはなりません。
もちろん、既得権益者は現状のシステムを守ろうとするので簡単に変わるものはないですが、かといって援助しろといったところでお情け程度の援助でごく一部が恩恵を受けるだけでしょう。
それであるならより前向きであったほうがいいですし、あるいは個人的な努力で改善するほうがより可能性があります。
頑張っても俺らの世代は報われなかったという人がいますが、その中でも報われてたのはやはり努力した人が多いということも事実です。

さて就職氷河期世代はそんなに悲惨な世代なのでしょうか。
私はそれほど悲惨とは思っていません。
私自身が幸いにも特に苦労もせずに生きてきたということを割り引いてもそれほど自分の世代が悲惨とは思えないのです。
人として生活していくうえでの環境は上の世代よりは良くなっているのではないでしょうか。

祖父母の世代は戦争を経験し、戦後の混乱を経験しています。
親の世代は途中まで週休1日でしたし、モーレツなサラリーマン世代です。
転職も難しく、やり直しの効かない世代でした。
私の母親は大阪の学区でトップ校を出ていますが、女性であるがゆえに大学に進学できず未来の選択肢が限られていました。
団塊ジュニアは確かに苦労をしていますが、女性がある程度活躍できる社会でしたし、近年は働く環境も良くなってきています。
パワハラ、セクハラが普通ということはなくなりましたし、根性論もきかなくなりました。
余計な飲み会や強制の私的な付き合いも随分と減っています。
生活レベルも親世代よりは上がっているのではないでしょうか。
親の世代は給料右肩上がりでしたが、堅実な生活をしている人が多い世代ですし、当然今のような便利なものに溢れている時代ではありません。
私達の世代は親世代より可処分所得が減っているかもしれませんが、若いころに国内海外旅行にいった回数はかなり多いでしょうし、家電なども普通に色々持っています。
多くのものやサービスの品質と価格は私が子供のころと比較すると隔世の感があります。
20代でインターネットが普及して、スマホなんていうとんでもないしろものも30代頃から使えています。

また、意外と盲点なのは親世代は堅実な生活によって資産を築き上げているということです。
私の世代では家を買うときの援助が普通にありますし、中には子供の教育費の援助を受けている人もいます。
親世代でも資産のばらつきはありますし、援助の考え方もそれぞれでしょうが、遺産も含めて親からそれなりに援助を受けることができるのは団塊ジュニアまでぐらいの世代ではないでしょうか。
親の団塊世代も土地持ちの長男以外は普通の家庭では資産がそれほどはなかったし、兄弟も多いので遺産はそれほどもらえていないでしょう。
40代の引きこもりがクローズアップされますが、そもそも引きこもりを抱えても生活できるのは親世代の資産や年金があるからで、今後は中高年の引きこもりは経済的に難しいのではないでしょうか。

悲惨とかかわいそうとか、弱者とかそんな言葉を人は使いたがりますが、ただそれを唱えるだけでどれほどの説得力や共感が得られるのだろうかと思います。
それらの言葉は感情を揺さぶりイメージを喚起するだけだからです。
主観的、個人的なものにとどまり普遍性を持ちえません。
反感を持つ人からは甘えだとか自己責任だという言葉が返ってくるでしょうし、実際にそういわれて当たり前の人も多くいるでしょう。
私も自分は可哀想だから、悲惨だから、損をしているからとか言われてもどうにも響かないのです。

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[ 2019/12/24 19:36 ] 社会 | TB(-) | CM(4)

2019年11月のお奨め本

2019年10月に読んだ本の中でお奨めのものを紹介します。

・私たちはなぜ税金を納めるのか: 租税の経済思想史 (諸富 徹)

17世紀の市民革命から現在までの税制の歴史をたどります。

近代国家での税金の政策上の意味の変遷や税金の徴収制度が分かりやすくて面白いです。
科学技術などと同じく税金の制度が変わるのもやはり戦争です。
ヨーロッパの国王は戦争があるたびに国庫が空になり議会の招集をかけて税金を取ろうとしますが、それに市民は抵抗しつつも国王と市民との力関係も変化していくのはまさに近代ヨーロッパの歴史です。

税金を徴収する方法は当初は関税や消費税などの比較的徴収しやすい制度から所得税へと変わっていき、現代では再び所得税の割合が下がっていくという税収の内訳も技術的、公平性の観点などから変化していいきます。
特にアメリカでの所得税導入の歴史が詳細に解説しており興味深いです。
アメリカでも南北戦争時に所得税が導入されますが、戦争後には廃止されます。
その後所得税が憲法違反とされるなど紆余曲折を経ますが、富裕層に税金を払わせるためなどで所得税を国家が完全に導入できるのは第一次世界大戦頃のことです。

税金は国家運営の財源だけでなくある目的を達成するための政策的な意味でも重要です。
昔からある関税制度による産業政策、独占の抑制のような競争市場の維持、所得の再分配のような社会政策があります。
その萌芽は19世紀ドイツの有機的国家観に見られます。
そして現在では国境を越えた過度な投機を防ぐために金融取引税を導入している国もあるように政策的な意味はより重要視されるようになっているのではないでしょうか。

分かりやすくまとまっておりお薦めです。




・エネルギーの科学史 (小山 慶太)

熱エネルギーを利用した蒸気機関に始まり、電気エネルギー、核エネルギー、そして反物質や暗黒エネルギーに至るまでの近代以降のエネルギーの歴史を解説しています。

実際に人類が利用しているエネルギーの話とそれ以降の現在利用できていないエネルギーで内容が少し異なります。
核エネルギーの章までは人類がどのようにして現代の人類の活動の基盤となる動力を手に入れてきたかが面白く解説しています。
19世紀に蒸気機関による自動計算機の設計がされたとあるのですが、何かを動かすというエネルギーを手に入れたときから甚るの生活は無限に広がってきたように思います。
ちなみにその自動計算機は当時は予算不足などで作れなかったそうですが、200年後にロンドン科学博物館が完成させたそうです。
反物質の章以降は実際には利用されていないエネルギーで内容も難しくなりますが、反物質とそのエネルギーについては特に面白いです。

面白い本ではあるのですが、説明が簡潔であるために基礎知識がある程度ないと難しいかもしれません。
理解できないところがあればネットで調べる必要があります。




・悲しみのイレーヌ (ピエール・ルメートル)

2人の女性が極めて残忍に殺害されます。
捜査にあたるヴェルーヴェン警部はやがて過去の未解決事件との繋がる連続殺人事件であることを突き止めます。
動機や関連性が明らかになっていくのですが、それは思ってもいないものでした。

最初はイメージしやすい描写とサイコ的な殺人事件を追いかける一風変わった刑事たちが面白かったのですが、最後は思っていない方向へと進みちょっと驚いてしまいました。
このタイプの刑事ものではあまり考えにくい展開で小説の全体像を知った時は犯人に私まで踊らされていたような気持になり、著者の狙いにまんまとはまりました。



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[ 2019/12/07 15:22 ] 今月のお奨め本 | TB(-) | CM(0)
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