人生の暇つぶし

2016年にリタイアしました。アーリーリタイアや資産運用、旅、読書などのネタを徒然なるままに書き綴ります。

2019年8月のお奨め本

2019年8月に読んだ本の中でお奨めのものを紹介します。

・新しいマクロ経済学―クラシカルとケインジアンの邂逅(齊藤 誠)

学部の静的なモデルから大学院の動的モデルへと進むうえでの橋渡しとなるマクロ経済学の教科書です。
新古典派やケインジアンの限界が指摘されマクロのモデルがどのように発展してきたかが(比較的)分かりやすいです。
世代間モデル、リスク、保険などがモデルにどのような影響を与え、そしてそれらの実証研究の紹介など学部レベルのマクロ経済学から一歩踏み出している感じです。
数学のレベルを抑えてあり、数式の意味も解説してくれていますが、数学にアレルギーがある人は受けつけないかもしれません。
ただし、数式はきちんと理解しなくても文章を読むだけでモデルの意味は分かると思います。

本書を読むとつくづく経済学とは何とも地味だし、無数の出来事が起こる現実世界を写し取るなんていう無茶な無理ゲーをしているような印象を受けます。
一方で世の中ではこれまでの主流派経済学の常識が覆されたとか、経済学のイノベーションでとうとう景気に対する完全な経済政策をモデル化できたなどと喧しいです。
けれども比較的単純なモデルでも現実の経済全体をうまく表現することはできていません。
経済学の道のりはまだまだ遠いのでしょうが、一方でやっぱり経済のコントロールなんてものは不可能なのではないかと感じてしまいます。
不老不死のほうがよっぽど実現性が高いのではないでしょうか。

一般的なマクロ経済学の教養としては学部の静学モデルで十分で本書までは必要ないかなと思います。
数式が多くなりますし、モデルそのものの細かな議論になってくるためです。
もちろん政治家や官僚であれば本書レベルぐらいのことはきちんと押さえておくべきだと思いますが。

学部の教科書より一歩進んだものを読みたい人におすすめです。




・古代日中関係史-倭の五王から遣唐使以降まで (河上 麻由子)

倭の五王の時代から遣唐使が終わった後までの日本と中国の関係史の概説書です。
500年ほどの関係史をまとめており駆け足感がありますが、古代の日本と中国の国際関係がよく分かり興味深い本です。
古代中国の政治情勢と周辺国との関係、仏教が中国で盛んになったことによる仏教を介した関係など当時の国際関係の軸と日本にとっての中国への使節派遣の意味するところなど、私があまり知らないことだったので面白く読めました。

聖徳太子が隋との対等性を主張して「日出づる処の・・・」と始まる国書を隋へ送ったというエピソードを小学生の時に読んだことを覚えています。
その時は日本の本なのだから単なるリップサービスみたいなもので、正しくは日本のほうが下だったのだろうと思いました。
しかし、現在でも対等を主張したとするのが学会の通説のようです。
当時の中国の国力を考えれば比べるまでもない思うのですが、日本はそれ程強気なのか、世間知らずだったのでしょうか。
著者は国書で使われている天子という言葉に新しい解釈を施し、対等を主張してはいなかったと主張しています。
いずれにせよ当時のアジアはやはり中国が政治も文化も圧倒的な覇権国だったことがよく分かります。

それにしても古代の歴史はその資料の少なさからほとんど想像に近いんじゃないか、たったそれだけの資料で何が言えるのかと疑問に思うことが多々あります。
それでもこのような研究が日々なされ通説に対しての批判が出てくるなどしていますし、事実の推測が難しいからこそそこにロマンみたいなものを感じてしまいます。
また、現在は言うまでもないですが古代においても国際関係は重要な意味を持っており、これらに着眼した研究はなかなか難しいですが、本書のような本は非常に意味があると思います。
おすすめです。




・白雪姫には死んでもらう (ネレ・ノイハウス)

11年前の少女連続殺人事件の犯人、トビアスが出所して故郷の村に帰ってきます。
彼は当時無実の主張をしており少女たちの死体も発見されないまま刑を終えることになりました。
その頃空軍基地跡から少女の死体が発見され殺害された少女の1人であることが判明します。
そして事件後に引っ越してきた少女アメリ―がトビアスに興味を持つことから物語が展開していきます。
刑事のオリヴァーとピアが11年前の事件の真相を追います。

発見した少女の死体から徐々に11年前の事件の真相が明らかになっていくのですが、テンポよく少しずつ事実が明らかなっていくので読むのが止まりませんでした。
あっと驚く真相ではなくどちらかというと登場人物たちの複雑な人間模様が引き起こした事件なのですが、この人間関係とそれらに起因する出来事が明らかになっていくというスタイルであり、よく練られている構成だと思います。
万人向けのミステリーです。



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[ 2019/09/07 16:58 ] 今月のお奨め本 | TB(-) | CM(0)

2019年7月のお奨め本

2019年7月に読んだ本の中でお奨めのものを紹介します。

・シナリオ分析 異次元緩和脱出 出口戦略のシミュレーション(高田 創 )

ふくらみに膨らんでしまった日銀のバランスシートをいかに正常に戻すか。
現状では議論すらできない日銀の出口戦略をシミュレーションを3つの観点から議論しています。
一つは日銀のバランスシート縮小でありうる日銀の債務超過、一つは日本の財政、そして最後にマイナス金利で収益が減っている金融機関です。

この手のシミュレーションは非常に難しいものです。
日銀が金利を上げると日銀の収支や財政、景気などに様々な経路で影響を及ぼします。
これらを考慮に入れての予測は難しく、あくまである程度の条件を設定せざるを得ません。
それでも本書では出口戦略の様々なケースを検討して具体的な数値で政府や日銀、金融機関にどのような影響を与えるかを予測している意欲的なものだと思います。
いつかは日銀も出口戦略を模索するはずでこのような議論のたたき台となるような研究は貴重です。

本書のシミュレーションはどれも針の穴を刺すような政策となるものでした。
果たしてますますポピュリズムが吹き荒れる日本でこのようなことが可能なのか疑問です。
しかし、一方で大きな痛みはありながらも出口にたどり着くのが早ければソフトランディングになることも可能なのではないかという印象も持ちました。
本書でも指摘されるようにそもそも本当に出口にたどり着けるかがかなり疑問です。
シミュレーションははあくまで景気が浮揚しインフレが起こってからの出口戦略という前提に立っています。
そして厄介なことに日銀の抱える国債の利回りがこれから低下していき、付利が上回る時期が迫ってきています。
つまりこのままずるずるといってもさらに新たな異次元な世界に入っていき、進も引くも苦難の道がまっています。

もうすでに進退窮まった日銀の政策は果たしてどうなってしまうのでしょうか。
出口戦略の具体的なところを知りたい人におすすめです。



・人工知能はなぜ椅子に座れないのか: 情報化社会における「知」と「生命」 (松田雄馬)

人工知能とはいったいどのようなものなのでしょうか。
人や動物が持つ知性を真似たものなのでしょうか。
あるいはまったく違うものなのでしょうか。
シンギュラリティが人口に膾炙して、AIがブームとなっていますが、一歩立ち止まって私たちの知性と人工知能の違いや関係について考えます。

AIが社会にどのような影響を及ぼしているか、シンギュラリティの衝撃といったような解説の本ではありません。
人工知能とはそもそも何かを私たちの知性と比較しながら解説している本です。

シンギュラリティなどというバズワードが広まり、世の中はAIブームでもあります。
けれどもAIが進歩したとはいえ、人間の知性と比較すると比べるまでもなく、シンギュラリティなんてものは当面は来ないでしょう。
当たり前ですが、AIが進化したと言っても所詮は人間が与えたただのアルゴリズムを超える目処は全く立っていません。

著者は私たちの知性と人工知能の根本的な違いを身体を持っていること、自己言及をできることとしています。
確かに人間は身体を持つことによって様々なものを認識できますし、自己言及ができることによって目的を持つことができますし、おそらく意思を持つこともできるのだと思います。
脳がそもそもそういう仕組みを持っているのでしょう。
ですから、SFであるような脳だけが維持装置で生かされているとき本当に知性を維持できるのかも疑問でなりません。

知性を持つとはどういうことか、生物の持つ知性の本質はどこにあるのだろうかということに興味がある人には読んで欲しい本です。
人工知能の話なのですが、こちらの話のほうが面白かったです。
AIが人間社会をどのように変えていくのかということを知りたいのならこの本はそれについてほとんど言及がありません。



・トランク・ミュージック (マイクル コナリー)

ロサンゼルスで崖上の空き地にとめられたロールスロイスのトランクから映画プロデューサーの男の死体が発見されます。
マフィアの手口で男はマフィアの資金洗浄に関わっていました。
殺人課のボッシュ刑事は資金洗浄をしていたマフィアを調べ始め、有力な証拠からラスベガスでマフィアの一員を逮捕しますが、そこから状況は二転三転していきます。

一匹狼の刑事ものハードボイルドです。
しかし、今回は理解ある上司と同僚に恵まれています。
途中で昔の恋人と再会してよりを戻すことさえします。
その分ハードボイルドの渋さが少し薄れているような感じもしますが、頑固で少々凶暴なボッシュは健在です。
今回も後半で二転さんてするのですが、伏線がはっきりしすぎていて驚きがないのが少々物足りなかったです。
それでもやっぱりボッシュはかっこいいです。




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[ 2019/08/06 15:52 ] 今月のお奨め本 | TB(-) | CM(4)
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