人生の暇つぶし

2016年にリタイアしました。アーリーリタイアや資産運用、旅、読書などのネタを徒然なるままに書き綴ります。

2017年2月のお奨め本

2017年2月に読んだ本の中でお奨めのものを紹介します。

・哲学入門 (バートランド・ラッセル)

確実な知識とは何なのでしょう。
目の前にある机は何も疑いなく実在しているのでしょうか。
ラッセルは感覚が受け取るデータをセンスデータと呼びセンスデータを介してしか机を認識することはできないのではないかというところから考えます。
そこから帰納や演繹により獲得できる知識、普遍へと議論を広げていきます。

まさに哲学入門として素晴らしい本です。
原題は「哲学の諸問題」ですが、初心者が哲学がどのように物事を考えるのかを辿っていけるような本です。
知識があまりなくても読めますが、内容は深く哲学の面白さを実感できる本だと思います。




・キリスト教とローマ帝国(ロドニー・スターク)

キリスト教がなぜローマ帝国で国教となるまでになったのでしょうか。
宗教社会学者がキリスト教の発展を社会理論を駆使して論じます。

歴史学の本を読んでいると批判的な学問なのか、個々の材料から紡ぎだした物語なのかわからなくなることがあります。
資料が少ない昔の事であればあるほど資料の欠落を何らかの方法で埋めなければなりません。
それを埋めているのは科学的な推測ではなく、研究者の思いや時代の思想風潮ではないのだろうかと思うことがあります。

著者は現代の新興宗教を研究対象とした宗教社会学者であり古代キリスト教の専門家ではありません。
資料も1次資料にはあたっていません。
しかし社会理論を使って古代キリスト教の研究に新しい光を当てています。
統計的な推論からキリスト教人口の推移を予測したり、現代の新興宗教の拡大過程を古代のキリスト教にも適用して論じます。
その他にも拡大過程でのユダヤ人の取り込み、教会での女性の地位、シナゴーグや教会の散らばりや中心都市からの距離なども分析しています。
時代が異なっても人の心性や行動で変わらない部分が多いはずです。
社会理論が歴史資料を構成して欠落を埋めるのに強力な武器となることを証明しています。

少し違った視点から古代キリスト教を知りたい人におすすめです。




・ザ・サン 罪の息子 (ジョー・ネスボ )

警察の情報を流す汚職警官だった父を持つサニーは薬物中毒で数々の殺人事件の犯人として刑務所にいました。
ある時刑務所内で父の死の真相を知らされることになります。
サニーは脱獄に成功してザ・トウィンと呼ばれる裏社会のボスと真の汚職警官への復讐劇が始まります。
そしてサニーの父の親友であった刑事のシモンは一時ギャンブル中毒に溺れながらも妻と出会い中毒から抜け出していました。
シモンは新米のエリート刑事カーリとともに連続殺人事件を追い、やがてサニーと交錯していきます。

警察小説好きならおすすめです。
小説で薬物中毒の話が出てきますが、刑務所で簡単に薬物が手に入るなどノルウェーは薬物中毒が社会問題になっているそうです。
ノルウェーは豊かで高福祉の国という印象を持っていましたので意外に思いました。
豊かだからといって心の隙間を塞ぐことは難しいのでしょうか。



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[ 2017/03/04 15:40 ] 今月のお奨め本 | TB(-) | CM(0)

2017年1月のお奨め本

2017年1月に読んだ本の中でお奨めのものを紹介します。

・アウトソーシングの国際経済学 グローバル貿易の変貌と日本企業のミクロ・データ分析(冨浦 英一)

現代の貿易理論とその実証研究を紹介しています。
著者の研究内容を一般向けに分かりやすくまとめた感じです。
現代の貿易はすでに最終財よりは中間財やサービスの貿易が重要性を高めています。
貿易の実体と企業行動、そして貿易理論との関係はどうなっているのでしょうか。
日本企業のミクロデータを使って輸出企業、直接投資、アウトソーシングをする企業はどのような特徴を持っているのかを実証しており、その結果は新・新貿易理論の唱える生産性の高さとの関連性があることを示しています。

リカードによる比較優位が唱えられてから貿易理論も少しずつ精緻化してきました。
ヘクシャー、オリーンが生産要素の賦存を取り入れそれまでの技術の差以外でも貿易を促進することを説明しました。
クルグマンらは規模の経済、消費者の多様性といった要素を取り入れて先進国間、同一産業内の貿易が生じる原因を説明しました。
現在の新・新貿易理論では何故同一産業内でも輸出を行う企業が限られているのかを企業の異質性に注目します。
それまでの生産性が同一の企業のみの仮定から生産性の異なる企業を考慮に入れて貿易との関係を論じるところまで来ているのです。
本書では新・新貿易理論に基づく研究について知るのにとても良い本で、国際経済に興味のある人は必読でしょう。

残念なことに国際経済の教科書で最初に出てくる比較優位を理解している人は1割もいないでしょう。
いつも思うのですが、大学受験の必須科目に経済学を加える必要があるのではないでしょうか。
比較優位のような易しい概念ぐらいは国民のほとんどが理解している国になってほしいものです。




・スペイン継承戦争―マールバラ公戦記とイギリス・ハノーヴァー朝誕生史(友清 理士)

スペイン継承戦争とイギリスのハノーヴァー朝が成立する過程をかなり詳細に記述しています。
戦記の要素がかなり強いですが、当時の国際関係や近代に向かっていくヨーロッパ特にイギリスについてよく理解できると思います。
特にイギリスの国内政治での女王、トーリー、ホイッグの闘争は戦争の状況やマールバラ夫妻との関係も絡んで二転三転していき興味深いです。
ちなみにマールバラはスペイン継承戦争で無敵を誇った英雄でイギリスのチャーチル元首相(爵位はない)の先祖になります。

誰でも知っているような戦争とはいえ、スペイン継承戦争というメジャーでもない戦争について日本人によってここまで詳細な解説をしてもらえるのはありがたいです。




・悪霊の館 (二階堂 黎人)

資産家の一族が住む西洋屋敷で当主の双子の孫の女性の1人が殺害されます。
しかもそこは密室で黒魔術のミサが行われた状態で首は切り取られていました。
館と一族に秘められた黒い歴史が彩られて、そしてまるで何かから復讐を受けているような凄惨な事態へと陥っていきます。
おなじみの二階堂蘭子は黎人をワトソン役にして解決に乗り出します。

プロットがよく練られており怪奇趣味的な雰囲気がとてもうまく表現されています。
資産家一族、館の歴史にまつわる謎もとても良いアクセントになっており感心させられます。
ただ肝心の密室トリックや犯人などの推理部分は少し物足りないものを感じました。
あとはストーリーの割には少し長く冗長なところもあるかもしれません。




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[ 2017/02/05 13:12 ] 今月のお奨め本 | TB(-) | CM(0)
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