人生の暇つぶし

2016年にリタイアしました。アーリーリタイアや資産運用、旅、読書などのネタを徒然なるままに書き綴ります。

2018年1月のお奨め本

2018年1月に読んだ本の中でお奨めのものを紹介します。

・カント入門講義: 超越論的観念論のロジック (冨田 恭彦)

カントの入門書です。
カントが知性に備わると考える、対象を捉えるアプリオリな枠組みを中心に解説しています。

人は形而上学的な課題に判断を下しますが、一体その判断の方法はどこから出てきているのでしょうか。
カントはアプリオリに与えられたものの見方があると考えます。
それは単一性などの量に関わるものであったり、原因と結果のような関係性、可能性のような様相などです。
このようなメタの部分の議論は面白い一方、果たしてそれがどの程度普遍性を保てるのでしょうか。
カント以後の哲学者たちはこの議論からさらなる思考を進めていくことができたのであり、カントが今でも重要な哲学者であることの理由でしょう。
カントがヒュームやロックの議論をどのように継承したかの解説もとても興味深いものです。

とても分かりやすく面白い解説書です。
カントの入門書では一番お薦めできると思います。



・ユダヤ人の歴史 (ポール ジョンソン)

古代から現代までのユダヤ人の苦難の歴史を描いた大著です。

ユダヤ人は世界史においてとてつもなく困難な道を歩んできたのにその民族性を保ち続けて生き残ってきた稀有な民族だと思います。
そして現代に入って本当にイスラエルの地に帰還し国を作ってしまったのですから。
彼らの迫害の歴史は人類の愚かさの歴史ともいえます。
啓蒙主義と言われるような人たちや知識人たちがアンチセミティズムに積極的に加担したことには愕然とします。
ヘイトスピーチをそのような人たちがしているようなものですから。
ホロコースト後も共産主義の国などでアンチセミティズムが続きましたが、ようやく現代では一部を除けばそのようなことはあまりなくなっています。
少しは人類も進歩しているということでしょう。
パレスチナの問題は当分は解決しそうにないですが。

著名なユダヤ人が多く出てきますが、著者の好き嫌いがはっきり出ていて面白いです。
特にマルクスへの評価は散々です。
アンチセミティズムであり、傲慢な人間であったと言います。
実際にそうなのでしょうが、資本論を自分が真理であると信じることを支持する証拠を本の中から集めただけであり学問でも何でもないと酷評しているのを引用しているのには笑ってしまいました。

ユダヤ民族の全史を書くのは相当困難な作業です。
その人の歴史観、宗教観に左右される部分もありますし、資料が少なかったり研究が十分でない時代や分野がほとんどだと思います。
しかし、一般の人や専門家にとってもこのような作品は必要不可欠なものだと思います。
通史として知りたいという人は多いでしょうし、このような通史から専門家たちの議論が活発になることも多いからです。
読んでいて疑問に思うことも多々ありましたが、著者のこの精力的な仕事はやはり素晴らしいと思います。
ここから新たに一般向けのユダヤ人の通史が出てくればいいなと思います。



・ロマの血脈(ジェームズ・ロリンズ)

科学の訓練を受けた特殊部隊シグマフォース隊長のグレイの目の前で神経科学者が殺害されます。
彼は致死量の放射線を浴びており、デルポイの神殿が描かれた硬貨を持っていました。
やがて不思議な能力を少女がグレイたちの前にあらわれ、グレイはインドへ向かいます。
一方で前の巻で行方不明となったグレイの盟友モンクはチェルノブイリ近くの地下都市で目を覚まし不思議な能力を持つ子供たちと脱走をすることになります。
そしてロシアで人類を危機に陥れる計画が進行していることが明らかになっていきます。

シグマフォースの本部、インド、チェルノブイリと3か所で場面転換してテンポよく進んでいきます。
いつものように驚くべき科学的事実をちりばめながらも一級のエンターテイメントに仕上がっています。
よくこれほど毎回いろんなアイデアを思いつくなと感心させられます。




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[ 2018/02/12 21:42 ] 今月のお奨め本 | TB(-) | CM(0)

2017年12月のお奨め本

2017年12月に読んだ本の中でお奨めのものを紹介します。

・宇宙に「終わり」はあるのか 最新宇宙論が描く、誕生から「10の100乗年」後まで (吉田 伸夫)

宇宙の始まりから終わりまでの壮大すぎる歴史の本です。
宇宙に素粒子が生まれ、様々な物質が形成され、星が生まれ、ついには知的生命体が生まれるにはどのような歴史を歩んできたのでしょうか。
これからも星が消滅して、再び生まれ続けるのでしょうか。
現在は宇宙史から見るとどのような位置にいるのでしょうか。
そして宇宙は最後にはどのような状態になるのでしょうか。

何もないところからどのようにして私たちが誕生してきたのかを考えるとロマンが尽きません。
ちっぽけすぎる存在の人類が宇宙全体のことを解明しようとしていることに驚きますし、ここまで解明されているのかと感動を覚えます。
それほど難しくないので是非読んで欲しい本です。



・興亡の世界史 イスラーム帝国のジハード (小杉 泰 )

イスラームが生まれてからアッバース朝までの歴史書です。
イスラーム初期の歴史入門書として最適ですが、歴史的な史実よりは社会と宗教、人物に焦点を置いています。
イスラームが分かりにくいのは宗教と社会が一致していることだと思います。
日本人のように宗教と社会、政治を分離して考えることになれていると、統治者と宗教の関係などはどうにもよく分からないでしょう。
イスラームの誕生とその成長過程とイスラーム帝国の成長の歴史をたどることによって理解の一助となると思います。

とても分かりやすいのですが、一方でイスラームに対する批判的精神に欠けていることも念頭に置いておくほうが良いと思います。
この世代の日本人の研究者はイスラーム大好き、西欧によるイスラームに対する偏見への嫌悪が特徴です。
特に著者はその傾向が強い人です。
最近の若手はステレオタイプな欧米批判、イスラーム擁護のようなことがなくなってきていると思いますが、自分の研究分野に思い入れを持ちすぎて批判的な精神を忘れがちな人がイスラーム研究者に多いと思います。



・ラスト・コヨーテ (マイクル コナリー)

上司を殴り停職処分中の殺人課の刑事ボッシュは強制的に精神カウンセリングを受けされられます。
やがてボッシュは心の隅で引っかかっていた母親の未解決の殺人事件を調べ始めます。
ボッシュの母親は娼婦でボッシュを養護施設から出そうとしていたのですが、それはかなわないまま殺されてしまいました。
ボッシュはいくつもの違反行為を犯して個人的な捜査を始めます。
やがてある大物が捜査に介入していたことを突き止めます。

シリーズの中でも傑作と名高い作品です。
ボッシュという人間が形成されてきた過程を描く重要な作品でしょう。
ボッシュの家の近所にはコヨーテが時折現れるのですが、ラストコヨーテというタイトルも作品を象徴しています。



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[ 2018/01/20 15:44 ] 今月のお奨め本 | TB(-) | CM(2)
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